OpenAI DevDayで発表された「Copyright Shield」について調べてみた
危機管理室 江口です。
OpenAIの開発者向けカンファレンスであるOpenAI DevDayではさまざまな発表が行われました。発表された内容がOpenAIの公式にまとめられています。
このなかに、いろいろな新機能に混じって、「Copyright Shield(=著作権シールド)」というものがありました。これは機能というわけではなく、利用者が著作権など知的財産権の侵害で訴えられた際に、OpenAIが守る、という取り組みのようです。詳細が気になったので調べたところ、サービス利用規約に関係する項目も追加されていたようなので、読んでみました。
概要
- Copyright Shield は、知的財産権の侵害でユーザーが法的請求を受けた際にOpenAIが補償する制度です。
- ただし当然のことながら、これはあくまで意図しない侵害をしてしまった場合に補償するための制度であり、悪意をもって著作権侵害をする場合は補償の対象外となります。
公式アナウンスの説明
上記の公式アナウンスの記事でのCopyright Shieldの説明は以下の通りです。
Copyright Shield
OpenAI is committed to protecting our customers with built-in copyright safeguards in our systems. Today, we’re going one step further and introducing Copyright Shield—we will now step in and defend our customers, and pay the costs incurred, if you face legal claims around copyright infringement. This applies to generally available features of ChatGPT Enterprise and our developer platform.
日本語訳は以下の通りです。
Copyright Shield
OpenAIは、システムに組み込まれた著作権セーフガードでお客様を保護することをお約束します。今日、私たちはさらに一歩進んで、Copyright Shieldを導入します。著作権侵害に関する法的請求に直面した場合、私たちが介入してお客様を守り、発生した費用を支払います。これは、ChatGPT Enterpriseと開発者プラットフォームの一般的に利用可能な機能に適用されます。
対象にChatGPT Enterpriseと並んで「開発者プラットフォームの一般的に利用可能な機能」とありますが、これは要するにAPIでの利用を指しているようです。 YouTubeで公開されているKeynoteの動画では、11:41ごろからこのCopyright Shieldの説明がありますが、そのなかでは明確に「ChatGPT EnterpriseとAPIに適用される」と言明されています。
除外条件
著作権の侵害で訴えられてもOpenAIが費用を肩代わりしてくれるというのは大胆な話ですが、もちろんこれは意図せずに著作権を侵害してしまった場合に守る、という目的であって、意図的に著作権を侵害するような利用に適用されるものではないでしょう。
そのあたりの詳細は出ていないのかな、と思ったら、Service terms(サービス利用規約)が11月6日付で更新されているのに気が付きました。
読んでみると、APIとChatGPT Enterpriseの章に、このCopyright Shieldと関連すると思われる項目が追加されたようです。以下、APIの章の文面です。
OpenAI’s indemnification obligations to API customers under the Agreement include any third party claim that Customer’s use or distribution of Output infringes a third party’s intellectual property right. This indemnity does not apply where: (i) Customer or Customer’s End Users knew or should have known the Output was infringing or likely to infringe, (ii) Customer or Customer’s End Users disabled, ignored, or did not use any relevant citation, filtering or safety features or restrictions provided by OpenAI, (iii) Output was modified, transformed, or used in combination with products or services not provided by or on behalf of OpenAI, (iv) Customer or its End Users did not have the right to use the Input or fine-tuning files to generate the allegedly infringing Output, (v) the claim alleges violation of trademark or related rights based on Customer’s or its End Users’ use of Output in trade or commerce, and (vi) the allegedly infringing Output is from content from a Third Party Offering.
以下、若干読みやすいように整形した日本語訳です。
1. API 本契約に基づく API のお客様に対する OpenAI の補償義務には、お客様によるアウトプットの使用または配布が第三者の知的財産権を侵害するという第三者の主張が含まれます。この補償は、以下の場合には適用されません:
(i) お客様またはお客様のエンドユーザーが、アウトプットが知的財産権を侵害している、または侵害する可能性があることを知っていた、または知るべきであった場合
(ii) お客様またはお客様のエンドユーザーが、OpenAI が提供する関連する引用、フィルタリング、安全機能または制限を無効にした、無視した、または使用しなかった場合
(iii) アウトプットが、OpenAI によって、または OpenAI のために提供されていない製品またはサービスと組み合わせて、修正、変換、または使用された場合
(iv) お客様またはそのエンドユーザーが、侵害とされるアウトプットを生成するために入力ファイルまたは微調整ファイルを使用する権利を有していなかったこと
(v) 商取引におけるお客様またはそのエンドユーザーによるアウトプットの使用に基づき、商標権または関連権の侵害が主張されていること
(vi) 侵害とされるアウトプットが第三者の提供するコンテンツによるものであること。
なおChatGPT Enterprise側の項目に追加された文面もほぼ変わりませんでした。
この文面を読むと、知的財産権を「意図的に侵害した」「OpenAI側の著作権を守るような制限を何らかの方法で回避した」「最終的なアウトプットが第三者を介して提供された」場合などが、補償の対象外となる、ということのようです。
まとめ
上記のService Termsの記述から明らかなように、このCopyright Shieldは、利用者が得た出力が意図せず知的財産権の侵害が発生してしまい訴えられた場合に補償をする制度となります。
ただ、利用者側は引き続き入力において知的財産権の侵害を行っていないか、得た出力に問題ないかなど、問題ない利用かどうか、ユーザー側としては引き続き注意を払う必要はある点には留意しましょう。
それでも万が一AIの出力が他人の知的財産権を侵害してしまったら・・・という心配をする利用者の方にとっては、OpenAI社が救済措置を取る、というのは心強い話では、と思います。
というわけで、Copyright Shieldとその条件についての簡単なご紹介でした。
ではでは。